鳩不足

主に自分語り用

『The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -』が性癖特盛定食だった話

 『The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -』*1というゲームをプレイした。

 

 どうも私は『指輪物語』や『ナルニア国物語』のようなファンタジー作品が苦手な性質だ。しかし世間では高く評価されているわけで、数年前にこのファンタジー嫌い克服のため映画『ライラの冒険 黄金の羅針盤』を観たことがある。

 ところが残念なことにこの映画、途中で視聴をやめてしまった。死体が光の粒になって霧散するというファンタジー昇天表現が気にくわなくてイライラしたのだ。正直言ってグロが得意ではないのだが、かといってそうやって死の描写を避ける作品は嫌いである。死体は死体としてちゃんと描いてくれよ! と憤ったきり、私のファンタジーに対する苦手意識は治っていない(これは完全に私が悪い)。

 

 そんなことはどうでもいい。ゲームの話だ。

 

 命の価値が軽いゲームが好きだ。現実では猫じゃない限り一度きりの人生だが、ゲームの中じゃ無限に死ねる。確かに私は毎日のオナニーによって数億の自身のコピーを無駄死にさせているかもしれないが、それが原因となって毎年アメリカで計上される3761体もの死体の仲間になってしまっては元も子もない*2

 つまり、現実を生きるより死にゲーをやっていたほうが安全なのだ。ゲームの中でリスポーンを繰り返していると、心が洗われてこないだろうか。人間は死と再生を繰り返すことで魂のステージが上がるという教えがあるが、それと同じかもしれない。イライラしてコントローラーを投げつけたくなるって? 煩悩にとらわれて解脱できずに苦しむ仏教徒なんだろう。宗教観の違いである。

 

 死にゲーとはまた別に、演出としてわざと命の価値を軽く扱うゲームもある。当然のように配置された即死トラップが主人公を苦しめる『LIMBO』*3は、あえて画面をモノクロ調にすることでその残虐表現を紛らわさせている。繰り返される流血(しかしその血すら白黒である)に慣れたプレイヤーは次第に、主人公の死を「避けるべきもの」から「積み重ねて当然」のものと錯覚していく。

 『The Swapper』*4も命の価値がわからなくなるゲームだろう。このゲームは自身のクローンを作り、そのクローンに操作を切り替えることで進んでいくパズルアクションだ。操作を切り替えるということは、今まで動かしてきた身体からクローンに意識を乗り換えるということ。歯応えがある謎解きに夢中になっていると忘れがちだが、これまで歩んできた足跡には、仕掛けを乗り越えるために使い捨ててきた身体たち=自分の命が大量に転がっている。

 

 長々と話したが、そういうゲームが好きなのだ。『The MISSING』も風の噂でその手のゲームだと聞いていたので、こないだのSteamサマーセールで買ったわけだ。

 

 確かに命の価値が軽いゲームだった。しかし全く軽いとは言えなかった。

 

 『The MISSIMG』は主人公、J.J.マクフィールドが奇妙な島「追憶島」を探索するアクションアドベンチャーだ。親友のエミリーと共に追憶島にキャンプに来た彼女だったが、目を覚ますと1人きりに。姿を消した親友を探すため、J.J.を操作し危険にまみれた島を進んでいく。

 本作には先に話したタイトルのような、苦痛を薄れさせる工夫がない。むしろ強調しているまである。例えば、瀕死の危機に際し、主人公はそりゃもうめちゃめちゃに悲鳴をあげる。足が千切れれば呻き声を出し、フラフラと片足で歩くさまを見せつけてくる。向かってくる回転刃に怯えるモーションが作られているのを発見したときは、マジか! やべえな! と叫んでしまった。このゲーム、残虐表現に拘り過ぎなのだ。しかしステージを進むためには、そんな無残な仕打ちへ積極的に向かっていく必要がある。自ら切断した肢体を重り代わりに投げ、火だるまになりながら障害物を燃やし、時には頭ひとつで鋸の隙間を通り過ぎなければならない。

 

 いやもうJ.J.のキャラデザといいモーションがいちいち可愛いんですよ。そんな彼女を操ってわざわざ苦痛に向かわせなければならない葛藤たるや! ……最高だった。っていうかこれつまりリョナゲーじゃねーか! 死にたくないけど死亡モーションが見たいから、という理由で主人公をトラップに突っこませたくなるこの感情、『ハナカンムリ〇』*5で味わったそれと同じだ。

 

 『ハナカンムリ〇』もそうだが、この手のゲームの主人公は困難を乗り越えるだけの強い意志を持っている。そうでなければ死を伴う冒険に心が折れてしまうからだ。そして我々は(我々とは?)そんな気骨のある女性が好きなのだ。J.J.がなぜ地獄の苦しみを繰り返し受けてなお、エミリーを見つけ出そうとするのか。その辺のストーリーに絡んだところを話すのは野暮だと思うので割愛する。私はただ単純にエロゲーとして、この作品を勧めたい。みんな『The MISSING』を買って抜こう! いやほんと性癖マシマシだったから!